カーデザイナーKくんについて、検索エンジンが教えてくれたこと
なぜかふと思い立って、学生時代の友人のKくんの名前をGoogleで検索してみた。
Kくんの本名は、珍しい氏名だ。
だから、一発で検索にかかった。
古い記事から上位に並んでいる検索結果。
それを辿っていってみた。
最初の記事は、Kくんが、T自動車のチーフデザイナーとしてニューモデルについて説明している記事。画像もあった。なんて誇らしげなんだろう。
子どもの頃から、T自動車のカーデザイナーになるのが夢だったという、クルマが大好きなKくん。その夢を叶えるために、美大に入った。これは狭き門だ。
さらに、就職先にはもちろんT自動車を志望して、見事に内定した。これまた狭き門だ。
カーデザイナーになりたいと思っていても、実際になれる人はほんのひと握り。そのひと握りの人になったKくん。本当に嬉しそうだった。
優しい性格のKくん。
そう裕福でもない学生なのにお金をためて、自分で小さなクルマを買った。
時々そのクルマに乗せてくれた。
夜だからと心配して、夜道の中を急いでクルマで迎えに来てくれた事も何度かあった。Kくんと結婚する人は幸せだろうな思ったことも一瞬あった。
T自動車に入って、いろいろ大変そうだったけれど、やがて、Kくんは、結婚した。
「家の庭でクルマを洗っているボクを、笑顔で見ていてくれるような人と結婚したい」。
それもまたクルマが大好きなKくんの夢だった。
まさにその通りの、楚々とした美女と、Kくんは結婚した。
その頃、お互い仕事が忙しくて、今のように電子メールもケータイもなくて、引っ越しなどしているうちに、Kくんと連絡が疎遠になってしまった。風の噂に子どももできたとか聞いたような。
そうか。Kくん。憧れのT自動車で、チーフデザイナーになったんだね。
新車の発表会に行けば、またKくんに会えるかな。
次に検索にかかった記事は、もうちょっと最近の、昨年秋の記事。
Kくんの肩書きは、主任になっていた。
出世したね。
子どもの頃から夢見ていた通りの人生だね。
輝いてるなぁ。
こんなに幸せな人生があるだろうか。
検索にかかった最後の記事は、去年の12月の記事。
Kくんが、大好きなクルマを運転していて、
人身事故を起こしたという記事だった。
夜道の中を、友人が待つレストランへ向かっていたという。
相手の人は亡くなったと。
Kくんは、自動車運転過失致死の疑いで逮捕されたと。
Kくんへの連絡先は、もうわからない。
自動車会社の社員が自動車で重大な人身事故を起こして、社に残れるはずもない。
連絡先がわかったとしても、いったい、自分に何ができるというんだろう。
子どもの頃からのカーデザイナーの夢を叶えて、幸せすぎたKくんの人生が、その大好きな自動車によって、一瞬で終わってしまったことに対して、いったい何ができると。
人の幸せって、いつどうなるか、わからないものだね。
そして、モニタの前の私は何もできないんだね。
これが、Kくんについて、検索エンジンが教えてくれたこと。



