商店街のある街
子どもたちふたり連れて、自転車に乗って、銭湯へ。
なんだかんだと大田区の悪口言ったって、離れたくないのは、たくさんの黒湯の銭湯のせい。
子どもたちは、銭湯の常連のおばあちゃんたちにさんざん構われ。
もぐったり、すべったり、体重計に乗ったり、大騒ぎして、
黒湯であたたまった体が、また自転車に乗る。
かあちゃんの子どもの頃のかすかな記憶、商店街。
家の前の道をまっすぐ行って、踏み切りのところを左に曲がると商店街。
お肉屋さんのオレンジ色の照明が道を照らしていた。
手を引かれて歩いた商店街。
もう今は、その商店街は、ひっきりなしにクルマが通り、子どもが歩ける道ではなく。
あれは世田谷の小さな駅の前。
なんだかんだと大田区の悪口言ったって、
離れたくないのは、商店街が生きているから。
子どもたちを自転車に乗せたまま、かあちゃんも乗ったまま
明るい照明のお肉屋さんの店先で、おじさんに、
「イカの下足唐揚と鶏唐揚ください!」。
スーパーじゃ、自転車に乗ったまま買い物できない。
自転車から子どもを降ろし、鍵を2重にかけ、ヘルメットをはずし、手を引いて買い物カゴを下げ、グズったりせがんだりする子どもたちを叱咤しながら、長蛇の列のレジに並び…スーパーでの買い物、あぁ気が遠くなる。
「はい! どうぞ!」
おじさんが手渡ししてくれた暖かい唐揚、自転車の後部座席のアトムが大事に抱える。
少し前の時代、こんなふうに、たくさんの人が商店街に支えられて生活していたんだ。
だから、子どもを連れていても、毎日の買い物や食事ができていたんだ。
そうやって、子どもを育ててきたんだ。
商店街のある街には子どもがいる。
子どもを相手にしない商店街は滅びていく。街も滅びていく。
そうだ、商店街のある街さえあれば、生きていける。
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